学級委員長って何をするの、面倒臭い
序でに言うと 私は今年も図書委員会でゆったりとした時間を過ごしたかった


さん、宜しくね」

しかも私は 今 目の前に居るこの鉢屋という男が 解せない
何を考えているのか 否 何も考えていないのか……


「はい…此方こそどうぞ宜しく」

私は 愚痴や文句の類を全て心の中にしまい 笑みを浮かべてそう答えた








*  *  *








?読書が好きで真面目な生徒、だなぁ」

昨年まで 彼女と委員会が一緒だった雷蔵に 彼女は一体どういう人物なのか訊いてみた
が、残念ながら予想通りの答えが返ってきた


「そういう普通の答えは求めていないんだけどなぁ」
「そんな事を言われても…三郎がもっと話しかけてみればいいんじゃない?」
「どうぞ宜しく、って言った時のさんの顔…怖かったんだもん」
「だもんって言われても……」


あの時の顔・・・彼女は笑顔を浮かべているつもりだったのだろう
だが 俺には解る、あれは不満を心の中に溜めている時の顔だ

そういえば 図書委員のじゃんけんをしていたのを目撃した
図書委員になる筈が 希望者が何人も居た所為でじゃんけん、それに負けて学級委員
…きっとそれで苛々していたのだろう

はたまた 俺の事が嫌いか ――それは考えたくはないな



さんは今年も図書委員になりたかったみたい、だから苛々してたよ」

そう言うと 雷蔵が笑った

は 中在家先輩並みに図書室の似合う人だからな…他の委員会に入っている姿が想像つかないや」
「…そんなに文学少女オーラ全開なのか」


雷蔵は 俺の数倍も彼女の事を知っているようだ

今年 初めて彼女と同じクラスになった俺と 既に委員会で顔を合わせていた雷蔵
…俺も 不思議と彼女の事を知りたくなってくる
あの 目立つまいと存在感をなるべく消そうとしている彼女の 心の内を覗いてみたいのだ


「雷蔵、さんって 怒鳴ったりするのかな」
「しないと思う」

珍しく 雷蔵が即答した

って喜怒哀楽が解りにくいと思うけど よく彼女が苛々しているって解ったね、三郎」
「まぁ なんとなく……でも面白いね、彼女の事を詳しく知りたいな」
「…にあまり迷惑かけちゃ駄目だよ?」



今年も 学級委員長委員会なんて 特に変化は無いだろうと思っていた
変化も無く まったりと時が過ぎていくのが あの委員会の良い所だが

しかし これは面白くなりそうだ

・・・彼女が怒鳴ったり笑ったりしているのを 是非ともこの眼で拝ませていただこう


「今年は面白くなりそうだよ、雷蔵」
「…いやだから にあまり迷惑を……」







 vol.1 first time






そして放課後、今年度初めての委員会がいよいよ始まる

昨年度の六年生が卒業し 一年生が入学してきた、ただそれだけの変化
そう思っていたのだが…



目の前に座っているさんは 黙って文庫本を読んでいる
俺と会話をする気は更々無いらしい



「…さん」

そもそも 俺は何故こんなにも彼女の心を開かせようと躍起になっているのだろうか

「はい」
「何 読んでるの」
「…小説を」
「恋愛小説とか?」
「…SFです」

SFとは 意外だ
彼女の事を ひとつだけ知れた


「SFって奥深いよね、タイムパラドックスとか 考えると面白い」

そう言うと さんが黙って頷いた
しかし 俺にはあまりSFの知識が無い為 話を掘り進める事が出来ない


「…過去に戻れる方法があったら どんなに便利か、と思うわ」

彼女が ようやく長めの台詞を口にした

「どうして?さん 何か悔いている事でも」
「……今朝に戻って…じゃんけんで パーを出す」

ああ それほど図書委員会でのんびりしたかったのか
ここで なら図書室に行けばいいだろ、なんて言ったら 彼女は怒るだろうか
流石の俺も ろくに話した事も無い女子に そんな事を言う勇気は無いが



「鉢屋君」

「え…あぁ 何?」

まさか彼女から声を掛けられるとは思わなかった


「この委員会って 具体的に何をするの?」
「……うーん…学園長を交えて 茶菓子を食べたり」
「ちゃ…茶菓子……それ 本当に?」

彼女が くすり、と微笑んだ



またひとつ 彼女の事を知る事が出来た

笑うと、結構可愛い







(09.6.9 現パロなので一人称を俺にしてあります。私、が少々不自然になってしまったので…)