くの一教室の中でトップクラスの成績を誇る
彼女を最強だと思っている忍たま達も少なくはない

けれど 彼女には致命的な弱点があった



「新野先生〜またが倒れました〜」

2人の女子が彼女を運び 保健室にやって来た


「またかぁ…困ったなぁ〜こればかりは薬草でどうにか出来るものじゃないからねぇ」

彼女がこうして運ばれてくるのは これで今月既に4回目だ
私が居ない時にも運ばれているかもしれないが


「先生、またですか?」

女子と先生の間から覗き込んでみると 気を失っている彼女がそこに居た
この光景も もうすっかりお馴染みだ


「とりあえず いつものように寝かしておこうか…伊作君、そこの布団をお願い」
「はい」




彼女は実戦訓練となると 実力以上の力を発揮するらしい
とても学生とは思えない機敏さだと噂になっていたな

ただし 訓練が終わると必ず気を失うという気絶癖が最近ついてしまったようだ
どうしてそこまでして頑張るのか…理解できないけれど



ちゃん、ここ数ヶ月間で倒れすぎだよ…」

目を覚まさない彼女に 話しかける 反応は無し


暫くして 新野先生が薬草を取りに出て行ってしまった
・・・ちょっと待って、これってもしかしてもしかすると…二人っきり?



ちゃん?」

「もうすぐ日が暮れちゃうよ」


どうして一方的に気を失っている相手に話しかけているかって
彼女が起きている状態じゃ 緊張して上手く話せないんだよね
面識はあるし時々話すけど なかなか話が続かない


「今日はまた一段と気を失ったままだね」

「そろそろ寒くなってきたなぁ…」


起きない事をいいことに 彼女の顔に顔を近づける


「・・・・・好きだよ」


そう一言呟いた時 ぱち、と彼女の大きな目が開いた

「伊作、本当?」

「……っうぁぁあっ!?」
「死人じゃないんだから そりゃ起きるわよ……なんか…顔近いね」
「…っ…ごめんっ」

慌てて部屋の隅まで離れたら 彼女がクスッと笑った
…不運というより これは何だ、罠か?


「私、最近すぐ倒れちゃって…やっぱり忍に向いてないわ」
「いや…相当実力あるしそんな事は」
「任務が終わっちゃあ倒れ、終わっちゃあ倒れじゃ…足手纏いになるだけよ」

こういう時に 彼女を元気づけるような言葉を言えない自分が悔しい


「くの一にならずに 何処かの家に嫁ごうかな……年頃だし?」
「それは勿体無い!ちゃんの実力なら色んな所からお誘いが」
「……私も随分前から好きなんだよ、伊作が…本当」
「…へっ…?」
「私を貰ってくれるなら 心置きなくくの一になる事を断てる、本気よ」


ああ・・・揺れているんだ
俺の私欲で彼女を甘やかしたら いけない

ちゃん、甘えない!」
「えぇっ!?…本気なのに」
「学園を卒業するまでは くの一にならないとか考えちゃ駄目」
「うー…うん…」
「…って ちゃん、いつか本当に貰っていいの?」
「その…は…恥ずかしいから二度言わせないで…」


その時 かたり、と扉の方で物音がした

二人で 扉に視線をやると


「あの…そろそろ入って、いいかね・・・」

「え!?…ちょっ居るなら居るって言ってくだ…さ……」


新野先生 間が悪すぎます





姫、今日も来たり



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(08.6.9 いさっくが女々しいんだか何なんだかになってしもうた)