NAKED US act1




この前 好きだった人に告白をした
緊張で その場にへたり込みそうになりながら 好きです、と
そしたら 間髪容れずにこう言われた ごめん 彼女居るんだ、と


告白した相手が学園の人間ではない事が 唯一の幸いだ
ダメージが大きすぎて 一緒の空間にすら もう居れない気がするから


彼女が居るなら それは仕方のない事
でも 人生で初めての告白だった……否定されたという事実にショックは隠しきれない

当たって砕けろと言われても ではその砕けた心は誰が修復してくれるのか

・・・その時 一人の男の顔が浮かんだ







お互いがお互い 傷を負った状態で 私達は付き合う事になった
それはなんとも滑稽で なんとも不純であった



私達は何年も前から 仲の良い友人関係というものを築いていた

お互い 相手がどんな性格なのかも知っているし どんな異性に恋していたのかも知っている
携帯番号だって 趣味だって 住所だって 色んな事を知っている

もし 恋人が出来たとしても 私は恋人よりもアイツを大事にするのかもしれない
恋人にそれがバレたらきっとこう言われるんだろう、「俺よりアイツの事が好きなんだろ」


恋心とは違う想いを抱きながら 私達は一緒に過ごしてきた
そんな私達が 恋人ごっこをする事になった

不思議な話だよね

















、帰ろっか」

「途中でコンビニ寄っていい?」
「最近発売された カスタードなんとかプリン?ってヤツを買いたいんでしょ」
「さすが伊作!よく分かってらっしゃる」



周囲の人間は私達のある変化には全く気付いていないだろう


元々 何年も前から色んな人に「貴方達って付き合ってるの?」とは何度も訊かれた
その度に否定してきた  実際付き合っていなかったし

だから 今の私達が 周囲が期待していたような関係である事には 誰も気付かないだろう
私達も 急に恋人オーラを出す訳でも無いから





「はぁ…外に出るとやっぱり暑いなぁ……」

そういえば もうすぐ夏休み
今年は去年よりも伊作と会う機会が増えるだろうか ・・・増えればいいな


「…またはそうやってスカートの裾持ってパタパタ扇いでるー」
「風を体内に送り込んでるだけだからいいじゃない…」
「本人は気付いてないと思うけど 正面から見ると時々パンツ見えてるからね、それ」
「……早く言ってよ!」
にも羞恥心があったんだ」
「私を何だと思ってるの」




私は コンマ数秒で自分を否定された傷が まだ癒えない
よくよく思えばそこまで良い男だったのかも疑わしいが 心に傷痕がある事は確かだ

隣に居るこの男も つい最近好きだった女子に彼氏が居る事が発覚して落ちこんでいたばかり
アンタは面と向かって振られた訳じゃないから まだマシじゃないの、と何度思った事か


でも 本気でその人の事を好いていたのか 最近はよく解らなくなっている

それは伊作のお陰かもしれないし 私の心境が変化したのかもしれない



付き合うようになってから 私達は時々手を繋ぐ事にした
勿論友達時代には そんな事はしていなかった 高校生なんて女友達とも手を繋がなくなるのだから当然だ



の手って基本冷たいよね」
「冬になると氷のような冷たさになるから 楽しみにしてて」


今まで 伊作の事をだいたいは知っていると思っていた
しかし こうして付き合ってみると 意外と知らない事も多かったんだと気付かされる

私と伊作 掌の温度がこんなに違ったなんて知らなかった



「私 伊作の事をもっと知りたい」
「お互い 充分色々知ってると思うけど…にしては積極的で」
「……分からない、最近ちょっと変かも」



半分自棄で 付き合う事になったけれど  私 ちょっと本気になってきたのかもしれない

でも伊作はきっと“半分自棄”のままなんだと思う

そう考えると・・・何故だろう、哀しい






「あ、 漫画借りたいって言ってたよね?」
「え?あぁ うん」
「家近いんだし 僕の家に寄って、直接持って帰ってよ」
「了解ー」



ねぇ 私の変化しつつあるこの気持ち アンタには解る?
…繋いだ掌伝いに この複雑な気持ちは届くだろうか

………届く筈が無いと解っていながら 温かいその掌を 想いを込めて強く握った







(09.4.2 ちょっとつづく)