「火矢が放たれたぞー!」 「まずい!城に火が!」 その声に反応し 後ろを振り向いた 燃え始めた城は 北風に煽られて更に激しく燃えていく その光景を見た瞬間 血の気が引いた 「・・・・皆を 助けないと」 踵を返して 燃える城へと向かう 火の粉を被りながら 私は必死に仲間達を捜そうと試みた その時 腕が千切れるかと思う位の強い力で引っ張られた 「火中に突っ込む気か!」 「…放してよ!皆が潜入してるから…まだあの中に…皆が……」 「今から行ったらお前が」 「でも…っ」 「駄目だ!絶対に行くな…行かせない」 夜空と、真っ赤な炎 目を瞑ると あの光景が鮮明に蘇る みんな、ごめんね 私だけ こうして今も 息をしていて 闇夜を抜ける刹那 上級生のくの一教室の生徒達が 三班に分かれて夜間実戦訓練をしていた 俺達は 女子の訓練が終わった後に同じ場所で訓練をする予定だったので その場に居合わせていた の班は城内に潜入していたのだが それが徒となってしまったわけだ 先生に報告をする為に一足先に城外へ出た以外の 仲間達は敵軍の急襲に巻き込まれてしまった まさか こんな事になるとは思わなかった いや 実際過去にもあった事ではあるが それはあくまで物語のようで 俺達にとって現実味は無かった 目の前で 仲間を見殺しにしなければならない苦しみ あの時 が仲間達を助けに行っていたら ・・・俺はの腕を必死に掴んだ 俺が此処でこの手を離してしまったら 二度とに会えない、そう思った だが はどうだろう 仲間を見殺しにした原因である俺の事を 憎むだろうか の部屋の襖を開けると 今日もは部屋の隅で虚ろな目をしていた 此処は元々三人部屋だったが 今は 一人しか居ない 「…また先生に頼まれたのね、私の所に来るように」 此方を見ないまま が呟いた 「これは俺の意思だ」 「気を遣わなくていいのよ」 の視線が 外の景色に移る 「あぁ…雪が降ってきた」 あの日以来 俺と目を合わそうとしないな、そういえば 「…結局 皆の身体は出てきたの?」 「……見つかってはいないそうだ」 「あぁ、そう」 の言葉 一言一言は なんだか鞭で打たれるような、そんな感覚に俺をさせる 「私もあの場所で…皆と一緒に灰になるべきだったのよ」 が零したその言葉が耳に入った瞬間 俺は半ば無意識で彼女の頬を叩いていた 「・・・痛い」 「班の仲間が今の言葉を聞いてたら 絶対にこうしていた」 あの日以来 初めてが俺の眼を見た 「てめぇは生きる運命になったんだから黙って生きやがれ」 「……留三郎に私の気持ちなんて解らないわ」 「自分だけが辛いと思ってたら大間違いだ」 「…それだけじゃない……色々あるんだよ馬鹿っ」 「馬鹿って何だ馬鹿って!」 「あぁもうやめて、私を見ないで…」 「……はぁ…?」 その瞬間 の横にあった座布団が俺に向かって飛んできた 咄嗟に受け止めた、顔で 「……ってぇぇ…これは絶対に鼻が潰れた…」 「皆に申し訳ないよ…あの班で私一人が生き残った上に……あんたが居ると…」 「俺が居ると駄目なのか?…よく解らないんだが」 「鈍感!もう嫌!」 が先程の座布団を俺の顔めがけて投げつけた 俺とした事が また顔面に食らってしまった 女心というものは よく解らない が、少しいつものに戻ったのなら 顔面に食らった甲斐があるというものだが… 「…私が…幸せに生きる事は罰当たりじゃないのかな…」 「罰当たりな訳無いだろ」 「こんな時にも空気を読まずに顔を出す私の恋心とか…感じていると凄く背徳的な気がして……」 「の気持ちまで潰す事は無いだろ?…ていうか何!?お前好きな人とか居たんだ…俺の知ってる人?」 「・・・・・・・・・・・」 これは悲しい事だが よくある事なんだ ひとつひとつ 苦しい現実を乗り越えなければいけない 戦の時代の宿命なんだ 「生まれ変われるなら 私は皆と一緒に穏やかな場所で楽しく過ごしたい」 の願いは 俺の願いでもある (09.1.18) |