快晴、少しだけ肌寒い日
今日も ゆったりと時間が流れていく

スコップ少年が茶屋に訪れてから一月程が経過した
彼ともう一度話したいのだが 彼はあれ以来 現れない


「…あ、いらっしゃいませ!」

談笑しながら 髪の長い二人の男子が茶屋の椅子に腰掛けた

「お茶を二人分ください」
「はい!おばちゃーん お茶二つ」

「……あの、」
「はい…?」

眼前の男子二人は 私の顔を食い入るように見つめている
まさか あの家の者達が今度こそ私を殺しに――

「もしかして くのたまだった先輩ですか?」

…という訳では なさそうだ





4.空は繋がっていますか?





そう言われれば 私もこの二人の顔を知っている気がする

「俺達は 先輩の一学年下で」

そうそう 学園の後輩で・・・必死に脳内の記憶を呼起す


「あぁ、思い出した!三年生の久々知君と尾浜君だ!」
「正解です!思い出して貰えて良かった。俺達ももう五年生になりました」

当時三年生だった、久々知君と尾浜君
歳も近かったので 何度か話した事がある
二人とも 三年生の中ではなかなかの優等生だった筈だ


「ところで 何故さんは此処の茶屋で働いているのですか?」

流石は尾浜君、疑問をさりげなく訊く

「退学した後は、かくかくしかじか…」
「なるほど。嫁いだ家から脱出して来た訳ですか」

尾浜君も 横に居る久々知君も 神妙な面持ちになってしまった

「でも 今はこうして元気に楽しく働いているから!もう大丈夫」

そう言うと 二人は微笑んでくれた
その優しさに 有難うと心の中で呟いた


そして 私は二人の優しさに 更に甘える

「…あのさ、六年生は元気…かなぁ?」






*  *  *






尾浜君と久々知君に頼んでしまった
文次郎の前で それとなく茶屋に十五歳の元くのたまが居るという話をしてほしい、と

しかし 一週間待てど 一ヶ月待てど 文次郎が茶屋の前に現れる事は無かった


一ヶ月半くらい経過した折に、尾浜君が茶屋に顔を出した
表情を見れば、言いたい事はだいたい解る


「なんか、ごめんね尾浜君」
「いえ こちらこそ…六年生は実習続きで忙しいので 来れないようですね」

女子は 男子よりも心を読む訓練をする授業が多かったのだ
相手が五年生とはいえ 嘘くらい簡単に見破れる

「正直に言っていいよ。気を遣わなくていいから!ね?私はもう学園生じゃないんだし」
「……今更に会った所で、と 先輩は…仰ってました」
「そっか、ありがと。久々知君にもありがとうって伝えてもらえるかな?」



寒風が身にしみた

もう一度彼と会う為に 頑張ろう…その一心で私は二年間過ごしてきた
でも それは 私の勝手な願いで、







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(11.4.7 冬が終われば春は来る)