嘘だ、これは嘘だ・・・



「うわぁぁごめんなさいごめんなさいっ」

「…ごめんで済むか」
「お願いっ一緒に捜してくれない?」
「断る」
「私だけじゃ確実に死ぬから!」
「いっそ一度死んだ方がいいのではないか?」
「そんな事言わないでよーこの通りっ!…ね?」

手を合わせて頭を下げるこの女を見ていると 益々苛つく


「…相当怒って…らっしゃる?」
「当たり前だ このアホが」
「ひぃぃっ」





切っても切れずに





くの一教室との合同訓練

私はとんでもないハズレ籤を引いてしまった



「立花だ!あはっ」
「・・・うっわぁ」


同じ籤を引いた相手が 私的にはしんベヱと喜三太並に鬼門としている
この女が絡むと ろくな事が無い
まさか籤に細工したんじゃないよな…?



「成績優秀の立花と組むなら 絶対大丈夫だわ!」
「お前が居るから失敗する気がする…」
「どんだけ信用してないの」
「天地がひっくり返っても信用しない」





罠が張り巡らされている城に忍び込み 隠されている密書を手に入れる

正直 は足手纏い以外の何物でもない予感がする
この程度の罠なら 私一人でもなんとかなる


「此処でずっと待機してろ、
「それじゃ訓練にならないじゃない!…あと照れずに、って呼んでいいのよ?」
「…怒るぞ?」
「短気!でも素敵!」
「・・・・・・・・」




きゃいきゃいと五月蝿いので 仕方なく一緒に行動する事にした


一応 は城内の罠をするりとかわしていく
確かにくの一としては悪くはないんだが・・・どうも 調子に乗る癖があるとみえる


、密書は何処にあるか覚えてるか」
「奥の茶室の茶釜の中…立花、私をナメてるわね」
「過去の経験上 私はお前の能力を全く信じていない」
「ふふっ…まぁ見ててくださいよ、真の私を」

そう言うと あいつは目を見張るような速さで罠をかわしつつ奥へと進んでいった
確かに 少しナメていたようだ




「…あった、これだ」

「お前 一応やればできるんだな」
「一応って何年忍術を学んできたと思ってるんですか」
「とりあえず戻るぞ」
「…労いの言葉をひとこと」
「図々しいな…まぁ、いいんじゃないか」
「キャッ」
「気色悪い声を出すな」





そうだ ここまではまだよかったんだ・・・





「…城は脱出した、これでもう後は戻るだけだ」

そう言ってちらりとを見たら 何だか様子がおかしい


「……おい、怪我でもしたか?」
「たたた立花様…お…怒らないで聞いてくれる?」

凄く 嫌な予感がする


「密書…無くなった」
「・・・・・ん?」
「懐に入れていた密書が…無くなりました」
「・・・・・・・・は?」


密書は手に入れたけど無くしました、なんて言い訳は通用しないに決まっている

たとえ時間が掛かっても 密書を持って帰るか帰らないかで点数が大きく変わる



「……お前って奴は…」
「すいません・・・・あぁそんな氷のような瞳で見ないでください」
「一応まずまずの成績だというのに…何故私の傍に居る時にヘマばかりするんだ」
「気合を入れると逆に駄目なのかもしれません…」
「冷静に分析してる暇があったら捜しに行け!」
「怖いので一緒に来て下さい…」
「はぁ!?」





そういうわけで 今に至る


木の上から城内を見下ろし 遠目で密書を捜す



「如何すれば懐の密書を落とすんだこのアホが」
「…わかりません」
「よほど胸がまな板なんだな…」
「それとこれとは関係無い!……あっあそこに!」

の指さす先に 密書が見えた


「…って 突っ立ってる城兵の足元に落ちてやがる」
「だねー…私が疾風の如くちゃっちゃと取ってきます」
「ちゃっちゃとはいいけど其処ら辺は罠だらけ…」
「うわぁ!」

…言わんこっちゃない
密書に気を取られすぎて は単純な罠に引っ掛かった


「あぁ…猪突猛進なんだな、よく解った」


侵入者を知らせる鈴の音が一斉に鳴り響いた



「曲者だ!」「捕まえろ!」


慌ただしい中 は密書を握りしめて敵兵をかわして木の上へ逃げてきた


「いつもそうやって本気を出せば良い成績になるんだろうに」
「私って絶体絶命の状況で本領発揮する性質みたい…はい密書、やっぱり私が持ってちゃ駄目ね」



その場を去ろうとした時 視界からふっとが消えた


「…おい?」


振り返ると 身体が地面の方へと落ちていくあいつの姿が見えた


「…ばっ…!」
「・・・・私はいいから」


間一髪 片腕を掴み 引き上げた

先程城兵に見つかった時に片足に怪我を負ったらしく 足に力が入らずに平衡が保てなかったようだ



「怪我したのなら怪我したって言えばいいのに」
「これ以上迷惑掛ける訳には行かないと思って…ごめん、ありがとう」

要らぬ所で意地を張る奴だ…


「…ところで、名前で呼んでくれたね」
「………危機一髪だったっていうのに 余裕だな」
「乙女というのは そういう生き物なんだよ?」
「可愛い子ぶるな」
「なにそれ!」












「先生、只今戻りました・・・」

「やぁ〜立花とが組むと本当に面白いものが見れるな!次の訓練も組め」
「いやんっ先生それは名案です」

「・・・嘘だろ」


死にかけた奴がよくもまぁ「いやんっ」なんて言ってられるな、と感心してしまった
やはり この女が絡むとろくな事にならないようだ…




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(08.8.23 腐れ縁パターン)