が何を考えているのかなんて 最初から解っちゃいなかった 何処かサバサバしているというか 飄々としているというか そんな所に 俺は惹かれたんだろうがな いつの間にか は俺の彼女になっていた いつの間にか 居て当たり前の存在になっていた 「私と温泉旅行、行かない?」 クソ暑い夏に温泉とは どういう神経してるんだ そう思ったが 俺は「行く」と返事をした この旅行で 俺との今後が決まるだろうと思ったからだ 「おぉ秋丸……なぁ、は他に好きな男でも出来たのか?」 久し振りに秋丸と会ったので 彼女の現状を把握しようとこの話題を振った 「別に そんな様子は無さそうだけど…」 「メールも電話もさっぱりだ、あいつは俺との仲を自然消滅させる気だろ」 「……お前達ってそっくりだよな」 何処らへんがそっくりなのか 小一時間問い詰めたい 少なくとも俺は やきもきさせるような男ではない・・・筈だが 「旅行に誘われたんだ、スーパーの抽選会で当たったんだと」 「あーが言ってたな!榛名 行く事にしたんだろ?8月のー…」 「どうして知ってるんだ」 「榛名が旅行の日にち指定したメールを送った時 の隣に居たんだよね」 俺よりこの男の方が の隣に居るとは どういう事だ 「……最後の旅行かもしれないからな」 「…それ も同じ事言ってた」 「………あぁ…やっぱり」 こんなに関係が冷めているのに 俺もも別れようとは言わないのが不思議だ 俺はさておき は別れたいとは思わないのか 何もしない“彼氏”だというのに 何故捨てないのか sinter* OVERDRIVE#5 四日目の朝 生憎の雨 窓辺に 下着姿で佇むあいつの姿で 完全に目が覚めた 「……なんっつぅ格好でそんな所に立ってんだ…阿呆か」 「窓の外は海、しかもこの大雨…見えないから大丈夫よ」 「そういう問題じゃねぇ…俺が気まずい、俺が」 「そう言うアンタはその布団剥いだら全裸でしょうが」 「見る?」 「ノーサンキュー」 恋愛的な倦怠期と性欲は別物なんだな 何よりも 生身のが一番良いのは変わらなかった 「元希 どうしたの、真面目な顔して何を考えて…」 「……ちゃんのいいカラダを見てたら勃ってきた」 「最低 自分で何とかしなさいよ」 生理現象を最低とはなんだ 最低とは 「今日は雨だし 真面目な話でもしよっか」 「…下着姿でそんな事言われてもなぁ」 そう言うと は宿の浴衣を羽織ってしまった しかし ここに来て「別れましょう」だなんて 今更言わないだろうな、おい それこそ 萎えるぜ 「私 ずっと不安だった 元希はもう私の事なんて好きじゃないのかなって」 お前達ってそっくりだよな ――秋丸の呟いた科白を思い出した 「…は 殆ど会わなくなっても 俺の事を好きだと思っていたのか?」 「正直…よく分からなかったの、私は高校生の頃のような気持ちを今も抱いているのかなって…」 がふう、と溜息を吐いて 俺の傍に座りこんだ 「でも……やっぱり好きなんだって再確認した」 「・・・・・・・」 「…不安だったんだから、昔は私に好きだ好きだって言ってくれたのに今じゃ全然だし」 「そ…そんなこっ恥ずかしい事 昔からそこまで言ってねぇよ!」 「いーや 言ってたね」 「記憶に無い」 そういえば あの頃は毎日会っていたんだ 色々と盛り上がる筈だな 「お互いすれ違ったまま貴重な時間を費やすのは 愚の骨頂だと思った」 「…の言い回しって時々難しいから焦るんだけど」 「……駄目だ、泣きそう」 こんな事を言ったら 女心が全然解ってないのね、なんて言われそうだが 何故泣くんだ いっそ 俺も泣いてしまいたい位だ 今 目の前に居るお前が無性に可愛く思えて ぐちゃぐちゃにしたいこの感情を 表す為にな 「…泣け泣け、思う存分泣け」 俺はを抱き寄せた 高校生の頃は 時々 校舎の裏でこうして強く抱きしめていたっけ 愛を直球で表していたんだな、恥ずかしい限りだ 「……どうして泣いているか 元希には解らないでしょ」 「お前エスパーか!?」 「…好きだから泣いているのよ」 窓の外では 雷鳴が轟いている 酷い天気だな 「ずっと 傍に居てくれ」 そう囁くと が泣きながら笑っていた ・・・器用なやつだな NEXT → (09.8.17 リスタート) |