此処は 山奥にある全寮制の中高一貫校 その寮の六階 男子棟と女子棟の間にある渡り廊下に毎晩立っている女 その女の名は 何故 渡り廊下に立っているかというと 男子が男子禁制の女子棟に侵入するのを防ぐ為だ 品行方正 成績優秀、故にこのような仕事を任されている の担当する六階は 最高学年が過ごしている最上階のフロアだ 「私だってねぇこんな役目は面倒臭くてしょうがないのよ!承諾したのは私自身だけどさぁ…」 「だからトイレ帰りの俺を捕まえて愚痴を聞いてもらおうと」 「偶然通ったのが文次郎だったから」 「…俺も運ねぇな」 「なにそれ」 素のが意外と饒舌なのを知っているのは 昔から親しくしている同級生くらいだ 基本的には 周囲からは近寄りがたい存在として見られている それは本人も気づいている 「でも仙蔵だったら捕まえないだろ?」 「・・・・当たり前じゃない!見て見ぬふりよ」 「一年の頃から同じクラスなんだからもう少し仲良くしろよ、小さい頃みたく」 文次郎がそう言うと は嫌だと言わんばかりに顔を引き攣らせた 「俺を間に挟むな」 「挟むなって…立花仙蔵は私の陰口でも叩いているわけ!?」 「……いや、別に」 「あっそれ嘘でしょ!何年文次郎と一緒に居ると思っている……あぁそう…あの野郎…」 苛々しているを眺めながら 文次郎は早く自分の部屋に戻りたいとひたすら考えていた 「じゃあ俺はそろそろ」 「待ったー!」 が文次郎の腕を盛大に引っ張った 「い…ってぇなオイッ!」 「ねぇ何?何なの?彼は私に何の恨みがあるの?」 「別に恨みは無いだろ、ただ…人間相性というものがあってだなぁ」 「何をしているんだ?文次郎」 文次郎の背後から 二人共よく知っている声が聞こえた 「あぁ仙蔵……仙蔵?」 「…何故繰り返した」 「いや…現れると思わなかったもんで…俺はと世間話を」 これの何処が世間話なのよ、と が小声で囁いた 「・・・・ふーん」 仙蔵はに さして興味も無いといったような視線を送る 「明日は試験だ、無駄な時間を過ごすなよ文次郎」 「…無駄って言った?」 目を合わさないようにしていたが 仙蔵を睨んだ 「ああ、居たんだ」 「なっ……さっきこっち見たじゃないの!もうっ何なのよその顔は!」 「おっ落ち着け!騒ぎになるから・・・仙蔵もいちいちそういう事を」 「文次郎は私の味方じゃないの!?どっちなのよ」 「俺を間に挟むな!二度目!……まぁ…頑張れよ、」 埒が明かないと判断した文次郎が 仙蔵を連れて男子棟へと戻っていった 渡り廊下に一人残されたは 誰も居ない事を確認してから壁を蹴って怒りを発散した 暫くしてから は窓の施錠を確認する為に見回りをし始めた 女子棟よりも断然広い男子棟にまで 何故女子である私が見回りをするのか ・・・は この仕事が一番面倒だと感じている ちなみに 此処では通常の学科の他にも忍術を行う実技も成績に加味される 今時忍術ってどうなの、なんて思う人も多いが 意外と需要はあるものだ に 男子棟に見回りに行くような仕事が与えられているのは 実技も成績優秀という証拠だ 咄嗟に相手を倒せないと それこそ思春期の狼達に襲われてしまう のスカートの中には無数の苦無が仕込まれている、という都市伝説がある程だ 「、煎餅食べる?」 「おっ伊作だ!食べる食べる」 ただ こうして廊下で食べ物を貰えたりする事には は充分満足している 「明日試験なのに大変だね、風紀のお仕事」 「本当…施錠の見回りなんて事務がやってくれ!って思うよ……あぁこれ美味しいね」 「でもなら試験は余裕でしょ」 「今回こそ あの男を倒すべく徹底的に勉強したからね」 「……あぁ…まだ仙蔵の事を」 「あのクールな面構えが歪むのを見たいだけよ…フフフッ」 大口を開けて煎餅を食べながら は手を振って伊作と別れた 「・・・・あれじゃモテないな」 「そう?結構好きだけど……って仙蔵!いつから居たの!?」 「今さっきだ…の行動時間と私の行動時間がどうも被るようでな…」 仙蔵が伊作の持っていた煎餅の袋から 勝手に煎餅をつまんで食べた 「そういえば仙蔵って昔はの事を苗字じゃなくて名前で呼んでなかったっけ」 「…低学年の頃だろ」 「どうしてそんなに仲悪くなっちゃったワケ?」 「この煎餅、美味いな」 「それ も言ってた」 「あっそう・・・・・いや、こうなった理由は私も覚えていない」 「じゃあまた仲良くすればいいんじゃない?」 「仲良くしてどうする」 「えぇ〜……って煎餅食べ過ぎ!街まで行かないと買えないんだから コレ…」 この一週間後 学園内を揺るがす下剋上が起こる事を 誰一人想像していなかった ・・・いや だけは想像していたかもしれない 嫌よ嫌よも …やっぱり嫌 NEXT → (08.9.20 これから宜しくお願いします) |