はいつものように 気だるそうに廊下を歩いていた



、ちょっと来い」

廊下の端で文次郎がを呼びとめた


「なーにー?…朝から元気そうですね」
「お前…やっちゃったな」
「何を?」
「試験の結果だよ、貼り出されたやつ見てないのか?」
「・・・・今日発表だっけ!」

先程までの気だるさを微塵も感じさせない素早さで 掲示板へと向かった









「うわ…やっちゃったねー」

掲示板を眺めながら が薄ら笑みを浮かべた


「俺 知らねぇ…」
「知らねぇじゃなくて 一位おめでとう!の一言でも言ったらどうなの?」
「あーおめでとう」
「棒読み!」


難攻不落と謳われた 永遠のトップ・立花仙蔵の牙城を崩した事は まさに事件

それを崩すとしたらさんだろう、とは言われていたが 実際もそれは不可能だと思っていた
たった一度だけでも 試験で一位になる事は の昔からの目標というよりも 寧ろ淡い夢だった




「でも…いざあの男の上に名前が書いてあると怖いものね」
「快感だろうな〜とか言ってたのは何処のどいつだよ」
「……私だけどさ…いや……この周囲のざわめきだけでも胃が痛いわよ」
、仙蔵にくれぐれも自ら自慢したりするなよ?」
「すっするわけないじゃない…そんな恐ろしい行為」
「あいつプライド高いからな」
「ですよねーアハハッ参っちゃったなぁ」
「…余裕そうじゃねーか」


そんな会話をしながら二人が教室の戸を開くと あろうことか仙蔵と鉢合わせた


「うおっ…仙蔵…どうして此処に」
「トイレに行こうと思って」
「ああそうか…人間だからな」

意味が分からないよ、とが文次郎を小突いた



「質問だ、文次郎」
「な…何だ…?」
「…ところでお前達は付き合ってるのか?」

「……まさか!」
関わらないでおこうと思っていただが この質問には思わず声を発してしまった


「仙蔵、断じて違う」
「そうよ!ずっと同じクラスだと仲良くなるのが普通で………」

は 思った
そしたら私とこの男だってずっと同じクラスだったのに 何故不仲なのか

不仲になった理由が も思い出せないでいた



「・・・気持ちが悪い」


そう呟いて 仙蔵が教室から出て行った






「私と文次郎のどっちが気持ち悪いかって言ったら」
「…俺を見るな!だいたいそういう問題じゃないだろ」
「本当 なに考えてるのか分からない人……あれ、ご機嫌ナナメってヤツ?」
「だとしたらの所為だろ」
「そう?・・・あーあ、何で今回あんなに試験勉強…頑張っちゃったんだろ」



















は 毎晩恒例の寮六階の見回りをしていた


同じ教室に いわば爆弾があるようなもので 今日一日のの心労は計り知れないものだった





「どうして私がいちいち気にしなきゃいけないのよ……」


溜息を吐きながら 男子棟の廊下を早足で歩く

面倒臭いからいっそ誰にも会いたくない、はそんな気持ちだった




「はーい ここの窓の施錠よーし、あっちもよーし、後は…一番奥の非常口だけ」


長い廊下の一番奥、そこはが最も早足になる場所

理由は単純 例のあの人の部屋があるからだ



「はんっ…角部屋なんて生意気なのよ」

仙蔵の部屋のドアに 聞こえない程度にひっそりと呟いた


その時 ぎぃ…と ゆっくり そのドアが開いた



「まさか聞こえ……ぎゃっ」

の腕が強い力によって引っ張られ 部屋に引き込まれる



「ちょっ…何!?」
「・・・顔は、嫌いじゃない・・・阿呆だが馬鹿ではない」
「……はぁ…?」

「お前って、従わせたくなるタイプだな」
「……はぁ…!?」


状況がまるで掴めていないと 不敵な笑みを浮かべる仙蔵がそこにいた








下剋上、

 歪みのシグナル







 NEXT →

(08.9.25 潮江とは無駄に仲良し)