は 私に好意を持っていると思っていた
友達以上の何かを

私も そうだった
ただ純粋に 彼女の事が好きだった



十四歳、焦っていたのかもしれないな

別に あのままの関係でも良かったのだろうに・・・





自分だけのものにしたかった

その為には 気持ちを伝えないといけない



私は彼女に 放課後 屋上に来てほしい、と伝えた
屋上なら誰にも邪魔されないと思ったからだ



しかし 授業が終わった後も なかなか彼女は来ない

痺れを切らした私は 彼女が掃除当番か何かを任されたのかと思い 教室を覗いた


其処には 文次郎と談笑しているが居た




私が呼んでいるというのに 悠長に何をしているんだ


ああ そういえば私と話している時よりも ずっと良い顔をしている…





その時 何かが歪んでしまった














「二年の時 私がを呼び出したんだ…言いたい事があったから」

「わたしは おまえがだいきらいだ、だから」

「……思い出したのか?」
「今…話を聞いていたら そんな映像が頭の中に浮かんできたわ……夢じゃないのね、これ」


は 笑みを浮かべた

文次郎は勿論 流石の仙蔵も この笑みは不気味に思えた



「私は何故この事を忘れてたんだろう…ショックすぎて 自分で記憶に蓋をしたのかな?」

そう言い クスクスとが笑った

「フフッそうそう…わざわざ呼び出しておいて散々に言われたっけ…懐かしい…
 てっきり告白でもされるのかって 凄く期待してたんだよ?…馬鹿な私はね」

「・・・・・・あんな事を言う筈では」

「やっぱり貴方は私の事が嫌いなんだ」







* * *







「私はお前が大嫌いだ」

の 呆然としたような顔を見た時に初めて 私は 大嫌いなんて口走っていた事に気づいた


「だから 私に気安く話しかけるな…不快だ」

「…そんな事を…言う為に私を此処に呼んだっていうの?」
「ああ」



私は 愚かだった

まだ後戻り出来た段階だったというのに 戻る事をしなかった


…くだらないプライドなんて 棄ててしまえばよかったのに



ただ 一時の嫉妬ひとつで 全てを狂わせてしまった





「……そう、わかった」


泣けばいいのに 怒ればいいのに は表情を変える事無く 立ち去った

そんなの強さが その時の私には憎らしく思えた

















「まぁ 全部思い出してすっきりしたわ・・・それほどの事でも無かったね」


そう呟くを眺めながら  嘘つけ、と文次郎は心の中で思った




* * *




あの時の事を思い返してみると は仙蔵にベタ惚れだった

正直 薄々そんな気はしていた、が 当時は「あくまで推測だ」と俺は割り切っていた





「仙蔵に呼び出されたぁ」
「…お前 何かやったのか?」
「まさか!…いやぁ、あの様子はちょっとアレなのよ…」
「アレ…って?」
「告白?」
「…ブッ!」
「ちょっとー唾飛ばさないでよ!」


が照れながら 俺にどうすればいいかを訊いてくる

あの頃の俺は 初めて出来た異性の友達であるの事を少し意識していた
仙蔵とが良い関係になる事は 正直面白くはない
悔しいとか憎たらしい、とは思わなかったが


「告白かどうかなんて分かんないだろ?」

内心では、あぁあの男も遂に「好きだ」って伝えるのか… と 俺は思っていた

「いや…あの様子は九割八分くらいはそんな雰囲気で……どうしよう…もう放課後だよ〜」
「どうしようって俺に言われても そんな経験無いから知るか」
「……そうよね…文次郎に訊いた所で…」
「失礼だな」

強張っていたの顔が 綻んだ


「待たせちゃうと怒られそうだし…行くわ」


駆け足で教室を出て行くの背中を 俺は黙ってただ見ていた





その五分後 戻って来たは 俺が今までに見た事の無いような顔をしていた






「…告白じゃなかったのか?」

「・・・・・・」


何か 予想外の出来事が起こった・・・それは俺にも分かった



「寮に戻る」
「おい、何か言われ……」

「友達でしょ?あっちに訊けばいいじゃない」



冷たい眼だった

俺は に初めて恐怖心を抱いた





あれから三日間 は部屋に籠ったままだった
同室だった女子に様子を訊いてみると 熱が出ていたとか何とか…

ちなみに二人の間に何があったかを仙蔵から教えてもらえたのは それから一年後だ




が復活した後 あの一連の出来事をは殆ど忘れていた



「忘れるとか…何があったかよく分からないが余程ショックだったんだな、お前」

「何が?高熱が続いた事は別にショックじゃないけど?驚いたけどね」
「・・・・・・・」
「ところで 時々立花仙蔵が私を睨んでくるんだけど…私、彼に何かしたっけ」





正直な話  こんな事には二度と巻き込まれたくない、そう俺は思った














「あの頃は若かった…ただ、それだけだな」


そして今 俺がそう言ったというのに 二人とも何も答えてくれない
まあ 仕方ないか・・・




どうして この二人はこうなってしまうのだろうか
あと 俺はどうして巻き込まれてしまうのだろうか








四年前から

 やり直せないか







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(08.11.2 選択肢を決めるのはその瞬間一度だけ)