屋上への階段を 一段一段昇っていく


今なら あの時のの気持ちが解る気がする
私はそんなの気持ちを踏み躙った・・・最悪だな




重厚な扉を開くと 身体が 強い陽射しと猛暑の熱気に覆われた





「忙しいのに、来てくれて有難う」



暑いだろうに 顔色ひとつ変える事無くが其処に立っていた



















「屋上に呼び出しぃ!?」

「シッ!声落として!」



昨晩は トイレ帰りの文次郎を渡り廊下で捕まえて この“一大決心”の事を全て話した


もなかなか怖い奴だよな…屋上じゃなくていいだろ」
「屋上だからこそ意味があるのよ!断ち切る為に、次へ進む為に…相応しい場所だわ」

「・・・どうして 突然好きだと言う気になったんだ?」
「時間はどう足掻いても止められない…私は次に進みたい、そう思ったまでよ」
「…よく決心したな」
「今なら大丈夫、たとえ気持ちに応えられないと言われても」



どうせ振られても夏休みを挟む、きっとその間に立ち直れる筈だ
そう は考えていた




「まぁ、そうは言っても緊張するよ…今から胃が痛いわ」

「…全然大丈夫じゃねぇな」
「そ…そうね…大丈夫じゃないのかもしれない」
「矛盾してるぞ」


は 大きく深呼吸をした


「これは仙蔵との勝負なの……明日は 緊張している姿なんて絶対に見せない」

「どうしてお前は要らんプライドまで高いんだ」
「あいつが私をこうしたのよ」








*  *  *








は 足の震えを必死に抑えていた
過去だと割り切っていても あの事はどうしても払拭しきれないようだ


拒まれるのが怖いのね、そう 自分で自分を分析した




「私 学習能力が無いみたいでね、また恋をしてしまったわ」

は 見つめるというより 睨みつける、そんな眼光で 仙蔵の顔に視線をやる

「しかも同じ人にね」






沈黙の時間が流れた


自分が作った状況だが 出来る事ならば今すぐ逃げたい、はそんな気持ちだった





「…それだけ、言いたかったの」
「・・・・、」
「忙しい日にごめんね」

「・・・私は 最近の自分が解らないんだ」


気付いた時 は仙蔵の腕のなかに居た


「四年前に自分で終わらせたんだ、お前と関わる事無く卒業する筈だった」
「…それなのに…?」
「お前は特別だったようだな」
「え……それって」
「……暑い、戻る」


そう言って仙蔵はを解放すると 校舎内へと戻って行った



「・・・つまり どういう事よ」

が 仙蔵の背中に向かって叫んだ

仙蔵がその声に反応して振り向く
の顔を見ると 恐ろしい程に爽やかな笑みを浮かべた


「…彼女にしてやろう」




「……吃驚する程 上から目線ね」








不器用な

 コンチェルト









「…今度はどうなった?屋上の一件は」

部屋に戻ってきた仙蔵に 早速文次郎が訊ねた



「あぁ、にでも訊けばいい」


その言葉に一瞬デジャヴを感じた
四年前 が呆然とした表情で似たような台詞を言っていたから


「…ま…まさか報復…!?」
「何の報復だ?」
「いや……お前…嫌いとでも言われた…のか…?」

「…逆だ、馬鹿」

「…おぉ…それはよかった……で、答えは」
に訊け」
「またそれかよ!ケチな奴だ」
「文次郎、お前楽しんでいるな?」






 NEXT →

(08.12.27 今は真冬、こっちは真夏)