夏休みの一ヶ月間 の心は浮いたり沈んだりを繰り返すばかりであった

あれは冗談だったのだろうか、はたまた本当に恋仲になれたのか





電車が遅延した影響で すっかり到着が遅れてしまった
上を向くと 満天の星空が広がっている


バスを降り 馴染みの門をくぐる
大荷物を抱えながら寮内に入ると あちらこちらから楽しそうな声が耳に入った

同級生との久しぶりの再会を 皆は楽しんでいるようだ



自分の部屋に直行すると はそのまま眠ってしまった


明日から また戦いが始まる




















は 教室に一番乗りしていた


誰も居ない教室で 一人 窓の外を見つめる
まだまだ、暑い日が続いている



「おぉ、昨日会わなかったから来てないと思った」

「文次郎だ!いや〜電車が遅延しちゃって夜着いたの・・・アンタも早いね、来るの」
「完徹だからな…」
「……また 鍛えてたら夜が明けたパターンですか」



窓の外に広がる木々に視線をやりながら 文次郎が口を開いた


「なぁ、お前 仙蔵と…」



その時 生徒達が続々と教室に入って来た


「…あぁ そろそろ時間か」

「あの、…この前の結果はどうなったって事でしょ?」
「…訊きにくいんだけどよ」
「一応良い感じっぽいんだけど本人に会わない限り……よく、分かんない」
「・・・なんだそりゃ」

「で、肝心の仙蔵さんは?」
「俺より早く校舎に行ってた筈なんだけどなぁ」
「えぇ?私見てないけど」
「……何やってんだ、アイツ」

「…あ、そんな事言ってたら来たよ」


予鈴の鐘が鳴るのと同時に 教室に不機嫌オーラを身に纏った仙蔵が現れた


「……な…何かあったのか…?」

文次郎が恐る恐る訊くと 明らかに不機嫌オーラが増した


「…ねぇ、何だか今日の仙蔵さんがとても美しい気がするのは私だけ?」
「朝早く行動したのが運の尽き、学園祭実行委員の奴らに捕まった」
「睫毛が長いし少し血色が良い・・・あっ化粧か!」
「あいつら……委員にならないなら写真を撮らせろなんてふざけやがって…ほぼ恐喝だ」
「でも 写真撮るから化粧って女子じゃないんだから………ハッ!まさか…じょっ」
、大声でそれ以上言ったら口を捻るぞ」
「すいません」



その姿を見た者は幸せになるという伝説の“立花君の女装”
…きっと委員の奴らはその写真を売り捌くんだわ……これは買わなければ

はそう思って にやりと笑みを浮かべた



「お前…写真見る気満々だな?」
「え?いやぁそんな事は…あははは」

クールな顔で仙蔵がの額にデコピンを食らわせた

「ったぁー!……女子に渾身の力でやる!?」
「これが愛の形だ、ハハハッ」
「バ…バイオレンス………って愛…?……屋上のアレ、覚えてたんですね」
「…忘れててほしかったのか?」
「滅相も御座いません…ただ信じられなかっただけです」
「いつまで経っても私の事を信用しないな、お前は……仕方ないのか」
「…信用してないんじゃなくて なかなか信じられないだけだってば」
「違いがよく解らんが…」







*  *  *







放課後 が廊下を歩いていると 一人の男子がに声を掛けてきた



先輩、ちょっと」

「はい…?あぁ貴方、敵に回すと恐そうな五年生の」
「何ですかそれ…鉢屋です」
「そんな鉢屋君が私に何の用でしょう」

三郎が 一眼レフの立派なカメラをに向けた


「え?…それってもしかして学園祭の」
「その通り、はいカメラに向かって笑ってください」
「ニコッ…じゃなくて!仙蔵はまだしも何で私まで撮られなきゃいけないのよ」
「要望があったので」
「…要望?なにそれ」
「あ〜眉間に皺を寄せないでください、笑って笑って」
「鉢屋お前っ無茶言うな!」
「…先輩って もっと大人しい女性だと思ってました」
「悪かったわね五月蝿くて」

要望とは何だ?嫌がらせの意味か?
が考えている間にも 三郎がカメラを向けながらに笑顔を促す


「まぁ…貴方も大変ね、一眼レフ片手に厄介な人ばかり撮って」
「意外と楽しいですよ」
「・・・しょうがない、営業スマイルを見せてやろうじゃないの」
「有難うございます、あと出来れば脱いでくださいという要望があります」
「…怒るよ?」
「あ〜また眉間に皺が…笑ってくださいよ」
「・・・・貴方には負けたわ、まぁ脱がないけどね」


写真がどのように使われるのか疑問を抱きながら が営業スマイルをレンズに向けた








セピアの私に

 色をつけて







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(08.12.31 今年最後の更新です…スレスレだ)