「ももももっ文次郎聞いてよっ」 「なっなんだよ!渾身の力で腕を掴むな!」 朝 食堂へ向かっていた文次郎を が捕まえた 「昨夜…文次郎の部屋を出た後にね…」 「…幽霊でも見たのか?」 「ある意味 幽霊より怖いわ……立花がさぁ…」 「お早う、」 が今まさに話題に上げようとしていた男の声が 二人の背後から聞こえた 「………ってお前」 文次郎が以上に目を丸くして 仙蔵の顔を見た 「…何だ?」 「いや別に……仲良き事は素晴らしきかな、だが…」 文次郎が横目でを見ると 明らかに仙蔵を不審な目で見ている彼女がそこに居た 「………立花、貴方は私の事が嫌いなんじゃないの?」 が 仙蔵に訊ねた 「だから元々嫌いだと思った事は無い…最近 何となく興味を持った」 「……何となく!?何となくって…何ぞや……」 怒りとも驚きとも違う 複雑な感情をは感じた 興味を持たれて嫌な気はしない、それは恐らく彼に好意を寄せていた時代があるから 何故 苦手感情が生まれたのかは覚えていないが そりゃあ 仲の良い人が一人でも多く居た方が良いに決まっている そんな事を 動きの鈍い朝の脳味噌で考えていたが 最後に一言呟いた 「…私、貴方の掌の上で踊らされてるような気がしてきた」 朝食の後 文次郎が仙蔵を呼びとめた 「・・・なんだ?」 「どういう風の吹き回しだ?仙蔵」 「…私が思ってた以上に あの女は、出来る」 「昔は仙蔵に追いつく為に 今は打倒・立花でずっと勉強してたみたいだしな」 「ふっ…成績だけではない、のプライドの高さも面白いからな」 「いやいや、お前が言うなよ」 「…ああいう女を手に入れたら面白いと思わないか」 ぴくり、と 文次郎の眉が動いた 「を傷つけるような事をしたら 俺は」 「…やっぱり好きなんだ」 「友人としては好きだが ありゃあ彼女としてはパスだ」 「なんだ、つまらん」 そう言って 仙蔵がけらけらと笑った 「安心しろ、別にを陥れるような事を企んでいる訳ではない…誤解されているようだが」 「に対する日頃の行いが良くないから誤解されるんだよ」 「接し方を変えたら 今度は不気味がられているけどな」 「…二年の時のアレ、は未だに忘れているみたいだな」 「何の事だ?」 「仙蔵、本当は覚えてるだろ」 「・・・・さあな」 それぞれの こころのうち NEXT → (08.10.12 いみしんちょう) |