校庭を散歩していたが これまた校庭を散歩していた学園長先生に呼びとめられた




「最近 理科室周辺で異臭騒ぎが起こっておるそうじゃ」

「はぁ…それは大変ですね」
「そこで 偶然通りかかった君にこの一件を解決してもらおうと…」
「学園長、寮内の壁をもう少し厚くして戴ければその一件 調べましょう」
「・・・・徐々に 厚く」
「…どうせやらないでしょうけどね、まぁいいですよ」




正直な所 は何でもいいので気を紛らわせたい所であった


ここ最近は仙蔵絡みの事ばかり考えている
たまには もう少しドキドキワクワクするような事を考えたい…そう思っていた









「で、全然異臭なんてしないじゃないのよ」


理科室に足を踏み入れたが あまりの異常の無さには拍子抜けした



「学園長先生の鼻がおかしいんじゃないの………あれ?」


臭いは感じないが なんとなく教室内にもやが掛かっているような気がした
もやの発生源を探していると 怪しげなビーカーがひとつ



「これは…紫の…液体……?」


「誰かがこの液体が化学反応するのを待って放置しているのか」

「…ぎゃぁっ!!って…また貴方ですか…」


何処からともなく現れた仙蔵が 教室に広がりはじめた もやを嫌がって窓を開けに行った



「で…何で居るのよ」
「担任に頼まれた、面倒臭いが特にやる事も無いしな」
「要は暇潰しね……って何か教室臭くなってきてない!?」


明らかに もやの色が徐々に変わってきて 尚且つ臭い


「一応この液体…水に流した方がいいんじゃない?」
「勝手にやればいい」
「立花ぁぁアンタも頼まれたなら一緒に考えなさいよ!!」
「短気な女は好かれないぞ?」
「結構です!」




が謎の液体を処分し 換気効果か 臭いもほぼ無くなった



「ふぅ…危うく死ぬ所だったわ……」

「こんなもので死んだら 異臭騒ぎが出た時点で誰か死んでるだろうが」
「……立花とだけは心中するのは御免だわっていう意味よ」
「私は別にと心中してもいいけどな」
「…………あんまりふざけてると 後々狼少年になるよ」


こういう事から逃げる為に理科室に来たというのに 何故 結局彼と話しているのか
は 溜息を吐いた



「…はころころと表情が変わって面白いな」
「色々あるんですー…苦悩の表情を楽しまないでください」
「・・・・お前は私が初恋だと言った」
「そ…っ…それは勝手に盗み聞きしたんでしょうが…というか私の声がデカいというか…」
「私もそうだった」

「へぇー・・・・・ん?」


が動いた瞬間 ごとごと、と 音を立てて ビーカーが転がった



「それってどういう………」


言葉を紡ごうとしたの唇が 塞がれた





その時 がらり、と 勢いよく 理科室の扉が開いた




「……あ、」


仙蔵にあっさりと唇を奪われたは 扉の入口に立っている伊作とばっちり目が合った



「・・・異臭騒ぎはやっぱり伊作、お前か」
「異臭…した?薬草いじりならこっそり此処でやってるけど……ていうか何して」
「私ももお前が引き起こした異臭騒ぎに巻き込まれたんだ」
「…いやそうではなく……たった今…見てはいけないものを見て……」


顔を真っ赤にしたが 駆け足で理科室を飛び出して行った



「…ほら、伊作が来るから」

「・・・・いやいや!あの様子は…同意の元に…その…ちゅーしてないでしょ…」
「何で?」
「何でって!付き合った上でああいう事するならこう…もっと甘いムードが」
「……あぁー」
「あぁって!……もー…我ながら絶妙なタイミングで此処に来ちゃったなぁ…はぁ…」

「そうか…伊作はがお気に入りだもんなぁ……」
「…最近思ってたんだけど 二人の関係って何なの?」

「・・・さぁ…」

「さぁって!文次郎に言いつけてやる!」
「それは絶対面倒臭い事になるから やめてくれ」








私の奥底が

 渦の如く







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(08.10.26 なんたる不運…)