髑髏の女 II 何故 今更あの女の事が気になるようになったのか…その事がどうしても頭に引っ掛かる 「…いや、今は余計な事を考えている場合じゃないわ」 私は 何処の城にも属していない、所謂フリーの忍者ってやつだ 基本的に 忍者ではなく野菜作り中心の生活、つまり農家のおねえさんと呼んで頂きたいのが私の本心 忍の仕事は 忍者としての腕が落ちない為にやっている、といった所だ とはいえ 気を抜いたら命を落としかねない 現在 私が行っているのは 諜報活動 あのオニタケ城がまぁまぁの給料を提示してきたという事は 大きな仕事という訳だ そんな時に 余計な事など考えてはいられない 「そろそろ オニタケとの同盟を破棄して 攻め入りたいと思うのじゃが」 「ならば我が軍が先に攻め入り、左翼からお宅の軍が突く」 「ははは!あとは隠密に軍を整え 三日後には動き始めようぞ」 ・・・敵の企み、しかと聞いた その企みさえ聞けば あとは立ち去るのみ 私は急いで敵城を抜け出した オニタケ城に戻る途中の森の中 私は不思議な感覚に襲われた 誰かに見られている気がする が、敵意は感じられない そうだ……この感覚は あの日の 「」 暗器を握りしめながら後ろを振り向くと あの女が此方を見ていた 髑髏を抱いた あの女が 「……あれ以来全然見ないから 何処かでくたばってるのかと思ったわ…いや 元々幽霊?」 「、あなた 忍の仕事は辞めた方がいいわ」 「急に現れたと思ったら忠告?…残念ながら若いうちに稼いでおきたいの」 「…百歩譲って辞めないとしても 後々起こる大きな戦に参加しては駄目」 「大きな戦って・・・何?先が見えるとでも」 「一回信じてみて、次の戦に参加しては駄目」 「…理由は?」 「貴方が死ぬ」 一応、忠告をしているのだろうか…しかし大袈裟な そこまで困窮している訳でも無いので 私は一度彼女の言う通りに行動してみようと思った 「まぁ…分かったわ、次の戦に関わる依頼は受けない事にするけど…」 「……ありがとう」 そして また今回も 気づいた時には 女は私の前から去っていた * * * 「卒業の時に 私の前に現れた女の話、覚えてる?」 三日振りに帰ってきた文次郎に 早速私はあの出来事を話した 「髑髏持ってナントカ…ってヤツ?」 「それそれ!最近何故かふっと思い出して…その矢先に本当に会ったのよ、森の中で」 「…俺も見たいな、その女」 「不気味だから止めといた方がいいわよ・・・でね、その女に忍を辞めろって言われた」 「その理由は」 「私が死ぬから…って」 「・・・俺もいつかは辞めろと言おうと思っていた」 思わず 持っていた野菜を落としそうになった 「わ…私が忍続けていいかって訊いたら良いって言ったじゃない!」 「が続けたい続けたいって言ってたから 別に良いって言ったけど」 「じゃあ何で今更そんな事を…」 「俺だってお前の事が心配だから本当は危ない事に首突っ込んで欲しくないだけだ」 「・・・・急に らしくない事を言われても」 「だ…だいたいその髑髏の女もそう言ってるんだ、たまには大人しくしてろ」 「……畑という畑で野菜ばっか作ってやる!青虫まみれになってやる!」 「あぁーそうしろそうしろ」 髑髏の女は文次郎の差し金じゃないかと一瞬思った そんな筈は無いと解ってはいるが そう考えるとなんとも憎らしくなってくる 「…ふん、大木先生と逢瀬を楽しんでくるわ」 「いつも通り らっきょう貰いに行くだけだろ」 「……キィィ!乙女心が分からない奴だこと!」 学園卒業生らしく 先生の畑まで風を切って走る 苛々した時や悩んだ時は こうして走っているのが一番気持ちが良い 「ん?おぉーか!今回もらっきょうか?」 「いただきます!」 大木先生に限った事ではないが こうして先生方に会うと あの頃に戻ったような気分になれる 毎日に一生懸命だった あの頃に 「先生、近々この近くで戦が始まるって情報…あります?」 畑でらっきょうを収穫している先生に向かって訊ねてみる 「戦?知らんなぁ・・・、お前身内に現役の忍者が居るだろうが」 「……身内に情報提供を求める事は遠慮しておきます」 「色々話は聞いても 相変わらずお前達が一緒に暮らしてる訳が分からん」 「…腐れ縁の…延長線?」 NEXT → (09.2.13 これからこれから) |