「ねぇねぇ さっき食堂でおばちゃんの手伝いしてたらさぁ」 また この女は我が物顔で委員会に乱入している ただ 後輩達は未だ来ない つまり部屋にはと俺だけ 委員会の邪魔だ、と 力ずくで追い出そうと思えば追い出せるのに 追い出さない俺は一体何なんだろう 邪魔な筈なのに 一緒に居るのが楽しいのか ・・・よくわからん まぁ 暫くすれば「ぐっばい!」なんて言いながら 自ら出て行くが 「…手伝いしてたら、何だ?」 「いやぁ山田先生の息子さんがいらっしゃって」 「利吉さんか」 「そう!同い年だったんだけど……なんて…格好良いんでしょう」 そう言って 恍惚とした表情を浮かべている 仙蔵といい食満といい……この女はどうなっているんだ 「あっちこっちで色目を使うのは の世界では普通なのか?」 「えぇっ誰かを格好良いな〜とか綺麗だな〜って思うのは自然な事じゃないの!?」 「お前は重症だ」 「確かにミーハーなのは否めないけど、愛情と憧憬は別物でしょ?…あっまさかアンタ……」 「……まさかアンタ…って何だよ」 「恋…した事 無いでしょ」 こい したこと ないでしょ というの一言が頭に響く 忍者の三禁の一つだから当然だ なのに何故に言われると負けたような気分になるのか… 「・・・・じゃあ 何処からが憧れで何処からが愛なんだ」 「あー やっぱり」 「…忍者は愛だ何だなんて必要ないんだ」 「意外と、何でこの人の事を好きになるんだろ…って人を好きになったりするものよ、面白いよね」 「答えになっていないが…」 「まっ私もそんなに経験豊富じゃないから 他人の事は言えないけどさ」 そういえば は愛情と憧憬は別物だと言った という事は・・・ 仙蔵や食満、利吉さんを素敵だと言うのは 別に男として好きだと思っている訳ではない…のか? 何だかよく解らないが 不思議な事に安心している自分が居る 「、例えばだな…例えば…ちょっと気になってる人が居るとする」 「うんうん」 「その人には異性として好きな人が居ないと知って ちょっと安心した・・・これって」 「そういうのは…好き、の…入口じゃないかなぁ?恋の始まりってヤツかね」 なんだって 恋だって・・・? 「愛されたい 抱きしめられたい 好きになればなる程に色々な欲が湧く」 恋をしているのか 俺は に いやまさか 「わからん……」 「恋って難しいよねー」 懊 悩 「おばちゃ〜ん 定食ください」 「ちゃんにはいつも手伝ってもらってるから…魚を一本おまけするわね」 「ありがとうございます!」 魚をつつきながら 考える 私は 偉そうに恋を語れる立場ではないのに 恋愛マスターのような口ぶりで話してしまった どちらかというと 楽しい恋より辛い恋の方が多かった気がするし 未来の私は 時間移動する事が出来る飴を私に渡したくらいだ あまり未来に期待出来ない 恋の方もイマイチなのかと思うと 余計に気が滅入る 誰か いい人が現れないかしら 「そうだちゃん、明日と明後日は六年生が訓練で居ないらしいねぇ」 「…そうなんですか?誰も何も言ってなかったけどな……皆 そういう話はしてくれないんだから」 「ちゃんに心配かけないようにと思って きっと話さないのよ」 「アハハッただ余計な事は話さないだけですよ!」 おばちゃんの言う通り 私に気を遣って話さないのだったら 皆の優しさに感涙するわよ、私 「訓練って聞くと やっぱり心配よね〜」 「おばちゃんも…?」 「昔から此処で働いていても そりゃあ毎回心配するわよ…皆が無事に帰ってきますようにって」 皆が無事に帰ってきますように・・・その言葉に重みを感じた 「…何だか心配で 胃が痛くなってきました」 「ちゃん、乱世はそういうものでしょうに」 「ま…まぁそうですけど……」 やはり 私はこの時代の人間には どうやっても なれない こんなにも此処は楽しいのに 私は此処の人間ではない 虚無感を感じるあの空間が私の元の世界 私は其処の人間だ 仕方のない事だと解っているのに その事を考えると 皆と距離を感じる 私 ずっと此処に居ていいのかな …居たい、な Next→ (08.7.19 ちょっとつづく。) |