文次郎は私の事をどう思っているのだろうか

所詮は ちょっと変わってる未来人…みたいな感覚なのか



それが知りたくなって ちょっと嘘を吐いてみたんだ



そしたら まさか こんな事になるなんて






「これやろうぜ!南蛮の玩具、黒髭突き刺しげぇむ!」
「小平太、突き刺しって…黒ひげ危機一髪じゃなかったか?だいたいもう何十回も既に…」
「まぁまぁ仙蔵、細かい事はいいから!ちゃんもほらっ」


完全に私の部屋が 宴会場のようになっている


今更 嘘だなんて……言えやしないよ





嘘 吐





12:05  (時刻は持参してきた腕時計を参照)



「ねぇ文次郎、そろそろ未来に帰ろうと思うの」
「・・・そうか」

そうか…? まさか 反応はそれだけ…?

「待てよ!みたいな反応を期待したんだけどなー」
「…帰るかどうかはが決める事だろ」


俺は関係無い、と言わんばかりの表情をしている目の前の男
…どうやら私は思った以上に短気なようだ

というか 期待しすぎてたようだ



「ああ帰ってやらぁ!」
「…相変わらずお前の怒りの沸点は分からんな」
「ハンッ、女心でも勉強して出直してきな!」



未来に帰る気はさらさら無い
どんな反応をするかが知りたかっただけなんだ

あんなに無反応だとは 思わなかったけれども…






16:42



さん、どうして突然帰る事になった訳?」

すれ違いざまに 仙蔵さんが私に囁いた
随分情報が早いこと…

「それは嘘なんです」
「嘘…って帰る事が?」
「はい」
「また随分と 冗談か本気か分からないような嘘をついたね…」
「文次郎がどんな反応するかな〜みたいな軽い気持ちだったんですがね」
「楽しくない反応だったんでしょ?」
「えぇ…それはもう残念な」

あいつに何かを期待した私が間違っていたのだと思う
けれど それでも期待するのが乙女心というヤツだ・・・多分



「…あ、さん この後面倒臭い事になるかもしれない」
「面倒臭い事…?」
「話が広がる前に火消し出来ればいいがな」





此処で火消し出来なかった事が この日の夜へと繋がっていく






20:36



「居た居た、さん」

風呂上がりにフラフラと学園内をうろついていたら 伊作君に声を掛けられた


「こんばんは〜」
「女の子が薄着でこんな所に居たら駄目だよ」

不意打ちの女の子扱いにドキリとしたのは 言うまでもない


「早く部屋に戻った方がいいよ?…早く、ね」

そう言うと 伊作君は何処かへ消えてしまった
なんだろうか あの含みのある言い方は・・・






20:40



部屋に戻り 蝋燭に火を灯す
座布団の上に座り 孤独にその火を見つめる


嘘まで吐いて 私は何をそんなに必死になっているんだろう

見ているだけで幸せ……そんな恋ばかりしていた私には 今の自分が不思議だ


「よく解らない……もう寝よう」



寝間着であるキャミソールとホットパンツに着替える為に 着物を脱ぐ

やはり私は洋服の方が落ち着くし 動きやすいのだと実感する瞬間だ



その時 かたり、と 音がした ・・・・ような気がした

心霊現象の類は得意では無い、此処は聞かなかった事に…




「あのー」


「……えっ…?」



声が 聴こえた 紛れもなく


振り返ると 天井から 頭が・・・




「でっででっででで出たぁぁぁっ!?悪!霊!退!散!」

「…お化けじゃない、私だ」


顔を上げると そこには

「仙蔵さん!どうして此処に…?」

「いや…あの嘘の火消し、無理だった」
「それって…」
「この部屋には他にも六年が潜んでいるんだが、その前に」
「その前に?」
「何か、着てもらいたいんだが」


視線を落とすと それはそれは現代的なブラとショーツを纏う己の身体が目に入った
おいおい 思いっきり下着姿だったではないか


「こ…こんな格好の時に天井裏から出てこないで下さいよ仙蔵さん!」
「いや…あの場面で存在を示さないと色々と人としてまずい気がして…」
「って さっき何て言いましたっけ?他にも六年が潜んで…とかなんとか…」
「天井裏に…」

「……もう お嫁に行けません」




寝間着を着て一呼吸置いてから 天井に向かって思いきり枕を投げつけてやった


上から何人も出て来たのは 言うまでもない



「で…何で皆がこんな所に潜んでるわけ!?」




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(08.8.1 次回は黒ひげをやるの段!…多分)