言ってしまった


その場の勢いで 言ってしまった


・・・どうすればいいのだろう




「と…突然こんな事言って……ごめ…ん」

「……、」
「あ…っ 事務のおばちゃんに呼ばれてたんだった…じゃあ」




しかも 言い逃げだ


私って 本当に意気地無し





文次郎が何か言おうとしてはいたが 遮った・・・聞けなかった


私の気持ちが彼にとって迷惑、負担になるものなら 私は気持ちを押し付けてはいけない
・・・此処から去らなければならない


勝手に好きだと言っておいて 帰りたくないから言い逃げした

なんて…自分本位なのだろう









学園内の池に放置してあったアヒルボートに勝手に乗って 座り込んだ
一人になりたかったから



「……いつから…好きになってたんだろ…」



寝転がると 憎らしい程に青い空が眼前に広がっていた


青い空の中で 白い雲がゆっくりと移動している
それをただ じっと見つめている 暇人な私



「…なんだか、どうでもよくなってきたなぁ」


青に吸い込まれるような・・・そんな気分になった










「………んん…?」


瞼を開くと 青かった空の色が橙色になっていた

もしかして もしかしなくとも・・・居眠りしてた?しかも夕方になっているという事実



「部屋に戻ってもう一眠りしようかな…」


ふぅ、と息を吐き 立ち上がった その時 


「…其処に居るのは誰だ?」

「ぎゃっ!!」


突如耳に入ったその声に 思わずバランスを崩してしまった

そして 見事に池に落ちた



「……あれ、さんだったのか…てっきり不審者かと」
「あぁ…仙蔵さんだぁ…」
「驚かせて悪かった…大丈夫?」
「いえいえ…池に落ちたのは私のうっかりです、うっかり…へへっ」




仙蔵さんに 池から引っ張り上げてもらう

デジャヴ・・・そうだ、落とし穴に落ちた時にも引っ張り上げてもらったんだった



「池に落ちたらすっかり目が覚めましたよ……うわぁびっしょびしょ…着替えなきゃ」

「…さん、文次郎に何か言った?」
「え?どうして…」
「頭抱えてたから…まぁさん絡みだろうと」
「こ…根拠は!?」
「想像は容易い・・・・ほら、早く着替えに行った方がいいよ」
「そっそうだよね風邪ひくね」



何で仙蔵さんってこう…色々と気がつくのだろう


・・・私に足りないものは、それか?





足 踏





「基本的に鈍いんだな、さんは」

仙蔵が俺の顔を見るなり そう言った


「ああ…鈍いな」
「お前もだがな、文次郎よ」
「………そうか…?」
「ハァ…無自覚って性質悪いんだよな」
「……すまん」



確かに 俺も鈍いのか・・・


最近 は俺の事を嫌いにでもなったのかと思っていた
そしたら好き、だとは・・・考えもしなかった


ああいう時は 何と言えばよかったのだろう




「……おんなごころってヤツは、よく解らんな」
「あぁもう、うだうだ言わずに抱きしめればいいんだよ!」
「おっ俺はそんな事する柄じゃないだろ!?…あと短気は損気だぞ」
「…私が何故二人の真ん中に入らなきゃいけないんだ?と思ったまでだ」





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(08.8.17 青空ってなんか心を解放させる力があるよね)