実は 今の私では恐らくこの時代に長く長く居続ける事は出来ない

私が今まで 過去に行った事があるのは一度だけ
実験のつもりで十年前に五日間だけ行った時だ


今回は 既に滞在して何十日も経過している

過去に滞在していた経験が 元々五日間しか無かった私だ





未来の私が残したメモに書いてあった事を思い出す

・・・不具合が いつ生じてもおかしくないんだ



私は 悔いを残さないように過ごしたい

だからこそ 気持ちを伝えたんだ











今日もまた 一日が終わろうとしている

食堂で夕食をいただき おばちゃんと世間話をしていたその時 ヤツが現れた


「おばちゃん、今日の定食は」
「潮江、鯖煮込み」
「それで……ってがどうして食堂に…!?」
「なにそれっ食堂くらい行くわよ!人間だもの」


この男 私の顔を見た途端に思いきり動揺していやがる



「・・・・何で正面に座るんだ」
「何処に座ろうと 私の勝手でしょうが」
「…そりゃそうだが」


私も 我ながら随分強くなったと思う  あんなに恋に対して臆病だったのに 不思議だ…



「私は…時間に限りがあるのよ」
「・・・え?」
「あぁご飯食べていいから…まぁ耳だけ傾けてりゃ」
「・・・・・・」
「……ごめん、やっぱ何でもないわ」



やはり 返事を聞く前にこういう話をするのはやめよう

情で好かれても 複雑な思いをするだけだ




そういえば… 仮に両想いだとする

けれど それだからって・・・どうなるんだろう?


私達の時代では 両想いなら付き合って…みたいな流れがある
では此処ではどうなる  忍者の卵をどうするつもりなんだ、私は



「あぁぁぁ…わけわかんない………文次郎よ、定食は美味しいかい?」
「何だよ急に…まぁ美味いが・・・・あと、この後自分の部屋で待ってろ」
「え?はぁ…」


・・・待て待て なんだそれは

何を言われるのだろうというという不安に駆られるのは 当然の流れだろう





恋 路





文次郎が来ないので 部屋で腕立て伏せをして待つ事にした

最近腕立て伏せをするように心掛けていて ようやく十数回は出来るようになった
これも鍛練の賜物ってやつだろうか



「おい」

「…うわぁっ入ってくるならノック…じゃない声掛けなさいよ!」



我が物顔で女子の部屋に入るその感覚を疑うわ
・・・いや 私も我が物顔で委員会や長屋に居座ったりしているか




「・・・・・・」
「・・・・・・」

黙ってないで何とか言ったらどうなのよ、と心の中でそっと呟く




「…は いつか帰るのか」

「帰るかもしれないしー帰らないかもしれないしーそれは分からない」


これは嘘だ  いつかは帰らざるを得ない状況になるかと思う


「お前みたいな女に出会った事が無かった」
「……それは未来から来たから的な意味で?」
「間抜けだし すぐ周りに迷惑掛けるし」
「そりゃ悪うございましたね」
「けど・・・憎めないから不思議だ」


いっそ何処かに逃げてしまいたいような そんな雰囲気

駄目だな、私は恋愛に向いてない性質のようだ



「俺はお前を……」
「ギャーッ!!」
「…ぎゃあ?」
「やだー怖いっ言わないでっ……や…やっぱ言って…」
「落ち着けよ……お前は特別なんだ、その…好きって…やつだ」


脳内で 無数もの鐘がリンゴンリンゴンと鳴り響いた・・・ような気がした



「……ヒヤァァーッ恥ずかしぃぃ」
「五月蝿い!いちいち騒ぐな!」





 Next→

(08.8.21 火山が大噴火ァァ)