長屋の戸を開くと そこには変な空気が流れていた 「…俺の…部屋だよな?…此処」 「さんと かるたの進化形らしいトランプというもので遊んでいるんだ」 「負けたら一発芸を披露しなきゃいけないのよ、ちょっと待って〜ぇ…」 と仙蔵が真剣な顔をして 二枚のトランプとやらを持っている 中心に その“トランプ”の山が出来ている 「・・・おい、」 「私か彼のどちらかがジョーカーっていうカードを持ってるの、それが残った人が負け」 「かるたよりも早く決着が着いて面白いぞ、お前もやってみればいい」 いや そういう問題じゃなくてだな 「の部屋でやればいいだろ、此処はそもそも女子は…」 「なぁに…少年達を襲うような思考は持ってないので安心してちょうだい」 「そうじゃなくて」 「ていうか夜になっても鍛練?文次郎が帰って来ないから仙蔵さんと遊んでたんだ」 前回までのアレはどうなった、アレは、あの雰囲気は! 「…俺に何か用か?」 「用は無いけど…明日は休みの日だし、いいかなーみたいな」 「はぁ・・・?とにかく俺は寝るからお前はさっさと部屋に帰れ!」 「うわぁはいはいっ分かったから大声で叫ばないでよ耳痛いっ」 が部屋を出ると 仙蔵がにやりと笑った 「全然変わってないんだな、ッククク…」 「…何がだ?」 「いや…色々あった割には今までと変わんないんだなって」 「・・・・・変わっても気色悪いだろ」 「…まぁ そうだけど…ちょっとつまらないな」 他人事だからって本当に楽しんでるな…この男は いや そもそも何がおかしいって男と二人きりで居る事だろう の好意は嘘なんじゃないか?なんて疑問が浮かぶ …を信じない訳ではない、ただ疑わしき行動を起こしているのはあいつ自身だ そういえば・・・俺達の仲って 何だ? あいつは未来…というか 元々居た時代を良く思っていないのは分かる だが 心の底から帰りたくないと思っているのか それとも本当は帰りたいのか 「私は…時間に限りがあるのよ」 ふと呟いた その言葉が引っ掛かる 結局 の本心なんて分かっていないんだな 嫉 妬 休日は 朝でも昼間でも皆の姿を見る事が出来て 楽しい 見ているだけで元気を貰えるって こういう事なんだな 外で遊んでいる下級生の子達を見ながら 私は今日も長屋でだらだらしている 遊ぶ元気が無いあたり 若さが薄れてきたな…なんて感じる今日この頃 「…ねぇ文次郎、良い天気だから外に行かない?」 「……お前は何故 暇あらば来る」 「来るのに理由が必要?」 「俺はそんなに暇じゃない」 「暇してるじゃない!なんか本読んでるけど…それキャラに合ってないよ」 今日の文次郎はなんとなく機嫌が悪い…気がする それにしても小難しそうな本を読んでいる ワープロ文字が印刷されている本で育った私には 敷居が高そうだ 「…楽しいー?」 「・・・・・・・」 「なにそれ、長次くんの真似?」 「五月蝿い」 「まぁ!」 恐らく私が何かしでかしたんだろう 思い当たる節があるような無いような… 「すみませんでした」 「……何が?」 「……………」 「…お前なぁ」 「ご機嫌斜めなのは私の所為でしょ」 「別に」 表情を見ればわかる、これは明らかに私が原因だな 「何も言わなきゃわかんないでしょうがー…」 「だから別に何も……ってベタベタするな暑苦しい!」 「…たまにはいいでしょ」 そういえば ぎゅってした事はあってもされた事が無い事に気づいてしまった そういう事に淡泊な時代柄なんだろうか それとも私にフェロモンが皆無なのか 「は軽いんだよ」 「・・・軽い?」 「そうそう」 口ではダメ出し、視線は本ですか 「あんまり言われた事は無いけどなぁ…」 「無意識のうちにこういう事、他の奴にもしてるんじゃないか」 こういう事って ベタベタしてる事? 「そこまで尻軽じゃないわ」 「どうだか……」 この男は私の事を全然信じてないんだ まさか 光のような速さで倦怠期が訪れているのだろうか 所詮は経験値の低い女、どうすれば信じてもらえるのかも分からない 「もー…私の事好きって嘘でしょ…」 「それはこっちが言いたい」 「私は好きだし……特別じゃなかったら抱きついたりしません」 「俺だってこの前言っただろうが、その…特別だって」 「・・・・じゃあ何でこんな事になったんだよー」 「…俺と居るより…仙蔵と居る方が楽しそうだから」 ああ、経験値の低い私でも解った・・・機嫌悪かった理由は嫉妬か 「…なぁんだ…可愛いでやんの」 「はぁ・・・?」 「いやぁ…フフフ」 「ニヤニヤするな気色悪い!」 もう一回 背中にへばりついたら 今度は怒られなかった 「……君も私も、まだまだ甘いわぁ…」 Next→ (08.8.26 まず痒み止めを塗ろうか) |