「あれ、もう大丈夫?」 「小松田さん!はいっ完全復活です!」 結局あれから三日間 私はずっと熱に魘されていた なかなか熱が下がらなかったのは 風邪のせいだけじゃ無いと思う …ちょっと無防備すぎるのかしら、私 「その割にはあんまり顔色がよくない気がするけど…」 「元々こんな色ですよ」 正直 身体のだるさは少しだけある けれど まぁ何日も寝ていたから身体が鈍っているのだろう 「ところでさん、さっきから気になってたんだけど…」 「なんでしょう?」 「肩に虫が乗っかってますよ」 「・・・え?」 自らの肩に視線をやると 毒々しい色をした虫がそこに居た 三秒後 ぞぞぞ、と鳥肌が立つのを感じた 「……ぎぃやぁぁあああ!!」 「うわぁぁっさん静かにっ今は授業中だからっ」 「いやぁぁ黙ってられっかぁぁ!取って!ねぇ取ってよ小松田さん!!」 「こっこれは毒虫の可能性があるからぁぁ」 「ぎぇぇぇ毒虫!?デジャヴ!って男なら取ってぇぇあっこら逃げるな小松田ぁぁ!!」 覚えてろよ小松田!と心の中で叫びながらも 虫の対処法を考える これがもし本当に毒虫ならば 下手に動いたら今ここで命を落としかねない 毒蛇やら毒虫を異常に愛でている孫兵君にとりあえずこの虫を取ってもらう事にしよう しかし彼は三年の何処の組だっただろうか… そうだ、会計委員の左門君がろ組という事は覚えている・・・彼に訊けばいいのだ という事で 虫が驚かない程度のスピードで私は三年生の教室へと向かった 「って……あれ?」 ろ組の教室に向かったものの 人っ子一人居やしない 隣のい組とは組も覗いてみるも 教室には誰も居ない 「…さん?」 「はっ…はいっ!?」 振り返ると 会計委員でお馴染みの三木ヱ門君が居た 教材でも運んでいるのか 大きな箱を抱えている 「こんな所でどうしたんですか」 「三年生は何処!?」 「誰も居ないって事は…学年で校外実習にでも行ってるのかと」 「えぇぇぇー…」 「三年生に用があるんですか?」 「というか孫兵君に…この毒々しい色の虫をどうにかしてもらおうと」 私の肩に乗る虫を見た途端 三木ヱ門君の顔が盛大に引き攣った 分かりやすい反応を どうもありがとう 「わっわわわっ私にはどうする事もでででできないのですが…これまずいんじゃ…」 「まずいから困ってるのよ〜!…取って?」 「……い…いくらさんの頼みといえども…」 「そうよね、その若い命…散らす訳には行かないわ…ありがと、私行くわ」 「いっ…行くって何処に…」 「……生きて帰ってこれたら…一緒にまた…お喋りしましょうね」 「そんな…さん…!!」 なんだろうこのコントは・・・と思いつつ 三木ヱ門君と別れた 一番頼りになる毒虫のエキスパートが居ない以上 あそこに行くしかない そうだ 六年生の教室だ 毒 蟲 「お邪魔しますところでこの虫取ってよ文次郎」 「・・・・なっなんでお前が此処に・・・!?」 「授業中悪いけど、私ちょっと死と隣り合わせなのよーお願い助けて」 「はぁ…!?意味が解らないんだが」 「とにかくお願い…虫が!」 「…あのさ、君達」 先生に五月蝿いからと文次郎共々教室から追い出された 「のお陰で俺まで追い出されたじゃねーか!おい!」 「そんな事より肩のこの虫どうにかして!」 「そんな事って肩の虫の方が“そんな事”だろうが」 「毒虫っぽいのよ〜」 「…なら何故伊賀崎孫兵の所へ行かないんだ」 「三年生が不在で…それより早くっ貴方と私の仲じゃないですか!ね?」 ぶつぶつ文句を言いながら 文次郎がまじまじと私の肩に乗る虫を眺めている 正直 眺めていないで一刻も早く取ってほしくて堪らない 「…これ」 「うん」 「毒虫に見えるが 草木によく居る普通の虫だぞ」 「……うん?」 「色は鮮やかだが毒虫ではない…あの毒虫野郎本人から聞いた事がある」 「……あぁ……という事は…」 「毒虫じゃないから自分でさっさと取れ!授業の邪魔しやがって!って事だ」 「うわぁ…それはすいませんでした…でも私……虫触れないから…取ってほしい…です」 「・・・・・・・・・」 「…に…睨まないで…すいませんってば……」 虫事件が一件落着した途端 どっと疲れを感じた 風邪からの復活一日目にして毒虫だ何だと騒いだら そりゃ疲れる 「……はぁ…」 「俺が溜息吐きたいんだが」 「…いやー…ただでさえちょっとだるかったのに…疲れたのよ…」 「まだ風邪治ってないのか?」 「そんな筈は無いけどなぁ……あぁそうだ、風邪うつってない?」 「全然」 「それならよかったわ…あんな事したからてっきり風邪うつってるかと思ったけど」 「あんな事?………お…」 この様子は私の言わんとしている事に気づいたようね そうよ キッスの事よ 「…起きてるなら起きてるって言え!」 「まさに寝る直前だったの!そんなにすぐ寝られるかっのび太じゃあるまいし」 「ノビタ?……とにかく…いやその……すまん」 何故そこで謝るんだろう 「いや…悪い事じゃないし」 「しかし・・・」 「じゃあ起きてる時…今、今ここで出来る?」 私ってどうしてこう 口が勝手に突っ走って行くのだろう こういう所が可愛くないんだよな、とは思うんだけれども 「ばっ!こんな廊下で…」 「あぁそう、起きてる相手には出来ないの」 「分かったよ そんなに言うなら…」 「廊下で騒ぐな!いい加減にしろ!」 「うわっ!……すいません」 また 先生に怒られた 「…俺の評価が下がったらの所為だからな」 「なにそれ!…いやまぁ今日の事は…すいません…」 Next→ (08.9.6 虫は…大敵です) |