この一ヶ月間は 色々な人と会った

家族や友人……他愛もない話が無性に楽しかった



最後に「さようなら」って言ったら 皆が「永遠の別れのように言うわね」って言った


貴方達は これから私の事を忘れる  それを貴方達は知らない

さようなら


勿論寂しい、でもこれが 私の選んだ道だから


残りの飴玉は一つ…片道切符では元の場所には戻れない





私は “現在”を去る



向こうの時代で 私が既に過去の人間として片付けられていたら…
私が現れても素気ない態度だったら…

そんな不安を払うかのように 息を大きく吸った



着物を着て 残り一つの飴玉を口に投げ入れる



・・・だが そこでひとつ重大な事に気づいた



「……あれって…いつの出来事だ…?」




私がトリップしたのが 一体西暦何年なのか分からないという大問題

当時の年号でも現在の西暦でも とにかく明確な数字を思い浮かべないとトリップは成功しない
室町末期・戦国初期あたりに適当に行ってみよう!
…なんて考えていた所為で 西暦何年を思い浮かべてトリップしたか覚えていない

メモ書きしていればよかったものの…… 人生で最も己のノープランっぷりを呪う瞬間が今、訪れた


戦の状況や文明具合から大凡の推理はするも 明確な年なんて分かる筈が無い
運が悪ければ三十年以上の誤差が出る可能性すらある



こうして焦るうちにも 口内の飴玉は徐々に溶けて小さくなっていく




「こうなったら賭けという名の自棄よ……さよなら現代!いざ往かん、過去の世界へ!」





現 在





あれから一月が経った


俺はを待っていて本当に良いのだろうか



「…さんの事は忘れろって言っただろう、文次郎」
「そういう事言うっていうのはお前も気にしてる証拠だろ、仙蔵」

「……そろそろ自分の事を考えないとな…卒業後どう生きていくか」
「…そうだな」




の事は過去の思い出にしようかと考える が、に預けられた指輪がそれを阻む


お前は今 何処に居るんだよ
何が預ける、だ  それなら早くこの指輪を取り戻しに来い



この指輪を捨てればから解放されるのだろうか


「…そんな事 出来る筈ねぇよな」




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(08.9.19 短いですがキリがいい所で)