この不思議な飴玉は 私の17の誕生日の朝 机の上にメモと共に置いてあった
メモ曰く 未来の私からの贈り物、らしい
5個しか無いので慎重に使うこと、と書かれていた

私は半信半疑だったので メモに書いてある手順で10年前へと移動してみた
手順とは、飴玉を口に含んで行きたい時代又は時間を願い 舐め終わるまで待つ事


そして実際に 小学生の頃の私自身をこの目で見た時 正直鳥肌が立った
夢物語のような出来事が 何の変哲も無い飴ひとつで現実になってしまったから

そこで試しに その10年前の世界に5日間滞在してみる事にした
体毛は全く剃らず 前髪だけは3cm程切った

元の時間に戻った時、前髪は短く体毛は伸びていた
つまり 過去で行った事が反映されているのだ
過去に居る間にも 私自身の身体は成長し、生理だって来る

ただし 元の時間に戻った瞬間に時計を見ると その時間はトリップしたその時間…
私が飴玉を舐め終わった まさにその時間であった


例えば 西暦2000年に20歳の人が過去へトリップしたとする
過去の世界で50年間滞在し 西暦2000年の世界へと帰って来た場合、
第三者から見ると、今までそこに居た20歳の人が 一瞬にして70歳の姿になるというわけだ

不思議なものだ… 私もメモにあった知識しか無いので よくわからない


要は 過去に長居をしても得な事はそうそう無い…のだろう

そこで味わえる 様々な経験は別として





飴 玉





「飴の事は何となく解ったが…本当なんだな、ずっと先の時代から来た事」
「信じてくれた?」

眉間に皺を寄せている文次郎 おそらく半信半疑だろう
信じても信じなくても正直 私は別にどちらでもいい
此処に居させて貰えている事が まずありがたいから

「暫く此処に居るって言ってたけど 髪伸びたりして不審に思われないのか?周りの人に」
「あぁ、一人暮らしだからそういう面は大丈夫!しがない浪人生ですから…学校も無いし」
「……武士!?」

そういや 浪人(牢人)って別の意味もあったんだった

「武士は無関係、普通の小娘よ…まぁ…とにかくそこん所は問題無しです」


大学受験に失敗して見事に浪人生になった私だが タイムトラベルには役立つな、と ふと思った

そういえば 如何して未来の私は過去の私に 時間移動出来る飴なんか渡したのだろう
未来を変えてほしいのか・・・なんだか少し将来が憂鬱に感じるわ



「ところで いつまでお前は此処に居るつもりだ」
「え?……あらぁ…」

食堂の時からほぼ一方的に 文次郎に対してマシンガントークを繰り広げてしまった
私 いつのまに…部屋まで付いてきたんだっけ…


「そろそろあいつが戻ってくる筈だから さっさと戻っておけ」
「あいつ?…あっ一人部屋じゃないんだ〜どうりで部屋が綺麗だと」
「それはどういう意味だ」
「んじゃ帰るわ、悪いねー喋りすぎたよ!」
「ついでに 本当は女子は此処に入れないんだから覚えとけよ…」


部屋を退散しようと戸を開いて一歩踏み出した途端 入ろうとした人とぶつかってしまった

「あだっすみません!やっ申し訳ありません!」

視線を上げると 見事なまでにサラサラの美しい髪が目に入った

「…いや…あ、君が噂の…文次郎に拾われた…」
「いやだから拾われたんじゃなく!…あっじゃあ失礼します…オホホホホ…」


いつの間にか 見事なまでの星空が広がっていた

しかし 六年生には美白なべっぴんさんも居るのね
どうすればそんな髪になれますか、といつか訊ける日が来るだろうか…




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(08.6.8 他にも不思議が色々詰まっているこのキャンデェー)